マーケティング活動を行うにあたり最も大切なことは市場機会の発見、これに尽きます。
市場機会とは、市場において競合他社にはない自社の強みや長所を発揮できる場所を指します。
ビジネスのジャンルや定めたターゲット、展開するエリアなど状況によって市場規模は異なりますが、市場規模の大小を問わず、競合他社を差し置いて自社が優位に立つための場所を発見することが大切です。
今回はこの市場機会を発見すべく分析のフレームワークであるVRIO分析について解説していきます。
あわせて知っておきたい3C分析とVRIO分析との関係性
今回のVRIO分析行うにあたり、3C分析との関係性を理解しておくことは大前提です。
3C分析とは以下の3つの頭文字からとっており、市場・顧客、競合、自社から成る業界内の環境分析の1つです。
- Customer:市場・顧客
- Competitor:競合
- Company:自社
PEST分析は3C分析より外側である、外部環境(マクロ環境)の分析を指していることに対し、3C分析は環境分析の中でも、業界内での分析を指しています。
また、同じ環境分析でも外部要因、内部要因の双方から分析するフレームワーク、ファイブフォース分析もあります。
参照:3C分析と分析方法・手順|行うべき業界内の事実を知るための分析より
関連:ファイブフォース分析とは| 自社収益の課題と戦略を立てるための分析
3C分析の流れとして、市場・顧客の分析、競合の分析を行った後、自社の分析を行いますが、この際に用いるフレームワークが今回紹介するVRIO分析となります。
VRIO分析とは?基本概念と分析の全体像と簡単な例
3C分析との関係性が理解できたら、次は今回の表題であるVRIO分析とはどういったものか、そして分析の全体像を学んでいきましょう。
VRIO分析は以下の頭文字から成る4つの観点からなるフレームワークで、自社の経営資源について競争優位性を図るための分析です。
- V: Value 経済価値
- R: Rarity 希少価値
- I:Imitability 模倣困難性
- O: Organization 組織
早速、それぞれが何を意味するかを理解しておきましょう。
Value 経済価値とは
VRIO分析における経済価値とは、あなたの企業において経済価値があるかとみなされているかどうかを分析する要素で、経営資源が組織自体や顧客、社会全体に対して利益をもたらしている度合いです
新たな市場への進出機会を考えたり、環境からなる脅威を図る要素でもあります。もしその経営資源持っていない場合と比較して、企業の売上が増大するかどうかを測ります。
Rarity 希少価値とは
VRIO分析における希少価値とは、 他社が保持していない経営資源を分析するため要素です。
自社の経営資源の希少価値が高いほど、後発の企業参入を防ぐことができます。
例として挙げるとすれば、簡単に取得することができない独自性の高い生産技術を持っていたり、世界有数の特定分野の専門家であることなど。
例に挙げたものは全国規模や世界規模といった大規模での希少価値ですが、あなたがもしローカルビジネスであれば、〇〇県唯一、〇〇市ではここだけといったものでも良いでしょう。
企業規模やターゲットとするエリアに応じて分析してみましょう。
Imitability 模倣困難性とは
VRIO分析における模倣困難性とは、読んで字のごとく自社の経営資源が他社に模倣されないものであるかどうかを測る分析要素です。
他社が簡単に真似をすることができない、希少資源を持つことで、その市場において長期にわたり競争優位性を保つことができます。
また、他社が模倣するのが困難とする要素は以下の4つの観点から分析していきます。
- 特許による制約
- 物理的要素だけでなく社会や政治が関わるような経営資源であるか
- 外部から見て自社の経営資源の仕組みが分からないようなブラックボックス化
- 企業独自の歴史的要因からなる経営資源であるか
Organization 組織とは
VRIO分析における組織とは、 企業が有する経営資源を有効的に活用できるかどうかを測る分析要素です。
たとえ他社にはない有利な経営資源を持っていたとしても、それをうまく活用できる組織でなければ、その価値は低くなります。
例えば、組織の体制や、ある物事に対する柔軟性、計画から実行、検証、続行撤退の見極めと言った意思決定の速さなどが当てはまります。
経営資源を人とした場合、どれだけその人材が優れている能力を持っていたとしても、この人材を活かすための組織の体制や、その人材が持つ能力を活かすことができないとような組織環境、年功序列による能力や実績が認められないような体制や経営思考などもこの要素に当てはまります。
VRIO分析方法と例
VRIO分析は以下の順に分析していきます。
- V: Value 経済価値
- R: Rarity 希少価値
- I:Imitability 模倣可能性
- O: Organization 組織
4つの要素ごとの分析結果による競争優位性の状態を例として表した表は以下となります。
分析結果例
経済価値があるか | 希少価値があるか | 模倣困難性は高いか | 組織の優位性はあるか | 競争優位の状態 |
YES | 競争劣位 | |||
YES | NO | 競争均等 | ||
YES | YES | NO | 一時的な競争優位性 | |
YES | YES | YES | YES | 継続的な競争優位性 |
この様に要素に「NO」が出た時短で競争優位の状態は決まります。
各競争優位の状態は文字の通りです。
競争劣位
・・・この段階で他社にすでに劣っている状態。まずはあなたの企業においてまず経済価値を見出さなければ、他社に勝つことはない危険な状態
競争均等
・・・この段階で他社と並んでいる状態。あなたの企業が他社より先に希少性のある経営資源を得て優位に立つか、他社が自社に対して希少性のある経営資源を得た時点で競争劣位に下落します。
一時的な競争優位
・・・文字通り現段階では他社より優っている状態です。特許による制約や社会や政治が関わるような経営資源を持っているなど要因は様々ですが、他社がそれに勝る要因を手に入れるまでの間は優位に立てます。
しかし、最大限に活かしていない状態のため、あとは組織の優位性を改善することで他社を引き離す可能性も秘めています。
継続的な競争優位性
・・・業界内で他社を寄せ付けない圧倒的に優位に立っている状態です。
VRIO分析結果に対する予測と確認事項
VRIO分析結果により予測されること、確認事項を例に挙げてみましたので参考にしてください。
このようにいくつも問いかけたり、可能性を探って検証、戦略を立てていきましょう。
経済価値が不足している場合
- 潜在している価値があるにも関わらずうまく活かしきれていないことはないか
- ターゲットの設定ミスが生じていないか
- プロモーション活動は行っているか
- 顧客のニーズと経営資源にズレがないか など
希少価値が不足している場合
- 新たに希少価値を高めた別のブランドの立ち上げの検討
- 希少価値のある別ブランドを立ち上げることで、これまでのターゲットと2本の柱で攻めるとができる
- 希少価値を高めることで差別化戦略へ切り替えて戦うことができる など
例に挙げたように別ブランドを立ち上げて切り離す戦略を取った方が良い場合もありますので、検討が必要です。
模倣困難性が不足している場合
- 製品を提供しているサービスの場合、次回の生産時に自社独自の技術を取り入れることができないか
- たとえ一時的に競争優位の状態であってもすぐに他社が模倣して追い付く、もしくは追い越されてしまう場合がある
- 現在の状態で顧客や見込み客がそのデザインや手法、価格などに満足している場合、変化させることで離脱する可能性があるので、顧客満足度などでリサーチを行う必要がある。また、現状を維持して別の戦略を考える必要がある。
組織が不足している場合
- 部署などの中規模から組織全体で経営資源を守ることに切り替えることで、利益をより多く得ることができる
- 従業員全体で協力体制を整えることで、現在以上に利益を得ることができる
- 現在のマネージャーから、チーフマネージャー、経営者が中心となって行うことで、その経営資源の価値を更に高めることができる
VRIO分析の魅力
ご覧頂いたようにVRIO分析は要素ごとに分析していくため、全体が理解しやすくなります。
VRIO分析に限らず、フレームワークをただ行っただけの穴埋め作業は意味を成しません。
浮かび上がった結果に対して、今後どうすべきかを検討することが大切です。
また、あくまでもこれは3C分析内の自社の分析に過ぎません。複数の分析を行い、様々な角度から情報を得て今後のマーケティング活動に活かすようにしてください。
今回文章中において「企業」と読んでいますが、冒頭にも述べたように企業規模問わず必ず行うべき分析です。
これまであなたが行っていた様々なマーケティングにおいて、なかなか成果を挙げることができなかった原因は、分析不足かもしれませんよ。
でも大丈夫です。本日ここであなたは1つの分析方法の存在と知識を得ることができました。
あとは、即行動に移すのみです。