クライアントからの要望で最も多い「新規客の集客」
もちろん新規客が増えなければ、売上のベースアップに繋がらないと思ってしまう気持ちはわかりますが、「新規客の集客」をまず行うべきでしょうか?
売上のベースをアップさせるには、まず繰り返し購入してくれている既存客に繰り返し購入してもらう仕組みを構築することが先です。
また、既存客顧客の減少を少しでも抑え、定着率を挙げる仕組みを整えたのち、新規客の集客に挑んだ方が売上を大きく底上げできます。
新規客の集客を好んだ小売業のクライアント様の事例
これは、実際に当時のクライアントさん(小売業)の方に実践してもらった事例です。
このクライアントさんも最初のヒアリングの際に僕に言ったのは「新規客の集客」でした。
現在の売り上げ状況や内訳、昨年からの売り上げ推移、顧客増減数、その他もろもろの内部分析を一通り終わらせた後、あらたってもっても「新規客の集客をしたい」とのこと。
通常はクライアントの持つ要望を真っ先に叶えるのが僕の仕事ですが、どうしても内部分析の結果が気になります。
小売業クライアント様の特に気になった内部分析結果
- 1客あたりの継続購入回数が少なく、早期段階で失客している場合が多い
- 新規客、既存客に対して何も施策を投じておらず2回め以降は客任せの状態
- 顧客リストを獲得する仕組みはあるが、その後活かしていない
他にもありますが、特に気になったのが上記3点です。
実際に、ヒアリング時にも話していましたが、せっかく購入してくれたお客様に対して何もケアしておらず、新しく客を集めては売り、またいなくなればまた集めの繰り返しの状態でした。
この方法でいいという固定観念があり、新しく何かをすることに対してどうも拒絶してしまうようです。
※いわゆる維持、衰退型のマインドセットです。
すぐに実行したマーケティング施策
- 休眠客の呼び戻し
- 新規客の初回購入からリピートしてもらう仕組みの構築
- 既存客への定期的なアプローチの仕組みの構築
- アップセル、クロスセルを用いた客単価の引き上げ
ご契約初期段階はまず上記4つの施策を当時、放置されていた状態から抜け出します。
※その後、その他の様々な改善は行っています。
その中でも特に印象的だった休眠客の呼び戻し施策をピックアップします。
休眠客の呼び戻しを最初に提案した理由
あなたはなぜ休眠客の呼び戻しを最初に行うかわかりますか?
休眠客=元々はあなたの商品やサービス、店を気に入ってくれて購入に至った顧客
売っている製品やサービス、クライアントさんの人柄、店の雰囲気などの魅力を少なからず「新規客」より知っているためです。
また、救いにも顧客リストは取っていたため、アプローチすることは可能です。
しかも「新規客の集客」よりも「休眠客の呼び戻し」の方が広告コストは低く、売り上げに繋がる可能性は高い。
ましてやこのクライアントさんは該当する顧客リスト289件持っているので尚更です。
留めに、まずは手始めにと言わんばかりに、用意して頂いた広告予算は結構シビアな金額でした。
「ローコストで売上を上げる」には「休眠客の呼び戻し」が最適だと判断したからです。
休眠客の呼び戻しの流れ
休眠客の呼び戻しには下記の流れで行いました。
顧客リストのセグメント
まずこのクライアントさんが持っている289件の顧客リストより今回の「休眠客の呼び戻し」に該当するリストを分けていきます。
よりローコスト且つ即効性を求める為今回の「休眠客」をリピート2回以上、過去3ヵ月以上1年半未満来店の無いリストをピックアップしました。(該当したリスト数は94件。)
休眠客の呼び戻しDMの種類の選定
今回の施策に採用したのはよりローコストで行うためDMを「はがき」で行いました。(当時のはがきの価格は62円)
というのも、定めているターゲット、実際に購入に至った既存客の多くを占める客層の年齢が高く、アナログ志向の方が多かったため、メールではなく、ハガキを採用しています。
(しかもメールアドレスを回収しているリストとそうでないリストも混ざっていました)
DMのデザインは今回無料で作製した為、デザインコストは¥0。(通常は有料ですので悪しからず)
休眠客の呼び戻しDMのオファー(特典)の選定
クライアントの行っているポイントカードが全部貯まると¥3000OFFでしたのでそれを上回る¥5000OFF。
オファー(特典)が乏しければ乏しい程効果は低いので、ここは思い切って¥5000OFFにしてもらいました。
※ただし15000円以上お買い上げに限る
休眠客の呼び戻しDMの期限の選定
打ち合わせの結果この施策を8/1~8/21までの3週間を期限としました。
また、あくまでも今回のターゲットは「休眠客」の為、通常のイベントよりも少し長くとって3週間としました。
期限を定めなかったり期限を長くするのは返って効果が低くなりますのでご注意ください。
この流れで「休眠客の呼び戻し」の準備は終わり。いよいよDMの発送。
該当リスト数94件×62円、デザイン料¥0 合計¥5828の広告コストでスタート。
リストのほとんどが男性の為イベント開催日より3日前に着くように発送。(男性って僕も含め毎日郵便受けをチェックしない方の方が多いですからね)
ひとまず、たくさんのご来店があるように祈ってから投函しましょう。
ここでこの施策の結果発表と思うのはまだ早い!!マーケティングジムではDMの送付回数は1回ではなく3回送ります。
効果倍増!!3ステップDMが効果的なワケ
送付回数は3回ですが3回とも同じものを3回ではありません。(ここ重要)
- まず1回目先程作成したDMを送付
- 2回目は今回のオファー(特典)イベントを見たかというコメントを加えて送付
- 3回目は今回のオファーはいよいよ8/21までという期限をあらためて強調して送付
なぜ3ステップが効果的なのか?それは心理的な効果も手伝います。(行動心理に関しては別記事にてアップしようと思います)
ちなみに個人的には体験したことがありませんが、何か支払いを長期滞納した際も、この3ステップでされるそうです。
今回のDMのように優しいニュアンスの文章ではなく、支払いの長期滞納の際はもっと強烈なニュアンスで行動を起こさざるを得ない(支払うもしくは何らかの連絡を入れる)心理状況に追い込みます。
世界的マーケター、ダン・ケネディがこの心理を用いてマーケティングに採用した事でも有名ですね。
以前他のクライアントさんでこの3ステップを採用したイベント、3ステップはコストがかさむからという理由で2ステップにした方のイベント、1回だけの方のイベントと検証しましたが、業種問わず3ステップDMの方が効果が高い結果となりました。(効果的なので出来る限り3ステップで行っていただきたい。)
今回のクライアントの「休眠客の呼び戻し」の結果
まず最初に送付した94通。最初の10日までに来店したのは4名でした。(住所エラーで3件戻ってきました)
若干苦笑い気味のクライアントを横目に2ステップ目87通の送付後、来店したのは6名。
3ステップ目81通の送付、来店したのは9名。
今回の休眠客の呼び戻し施策での売上¥431,300(5000OFF適用後)
DMコストは(94通+87通+81通)×62円=¥16,244
今回のDMによる来店人数19名(94名中)
DM回収率20.2%(良い反応の方です)
1人あたり最高でも182円のコストしかかけず、約43万円を売り上げた今回の休眠客の呼び戻し。
「休眠客」セグメントを3ヵ月から1年半未満の客に選定、お得なオファー(特典)、期限付き、3ステップDMと組み合わせることで出来たこの高い回収率。
コストがかかり、なかなか即効性が低い「新規客の集客」よりも先に「休眠客の呼び戻し」を行う方が売上に直結しやすいのが理解できたと思います。
更に、この来店した19名のうち4名がその翌月にも来店。また反応がなかった72名のうち3名が期間外の9月中旬までに来店したようです。
いかに短期間で多く来店し定着するか、例え一度離脱しても早期呼び戻しでまた再定着するか、施策次第で大きく変わります。
注意していただきたいのは3ステップの際に全く同じ内容で3回送らない事、またむやみやたらにオファーを送り続けない事、この2点は守ってください。(乱発することでより来店から遠のき完全に離脱する可能性がかなり高くなります)
紹介した施策は、顧客リストを用いて行う、いわゆるリストマーケティングの1つです。
今回は顧客の属性に応じて、接触手段をはがきにしましたが、メール、LINEなどでも応用可能です。
P.S 今回の休眠客の呼び戻しに感激し、それからというもの僕のいうことを素直に聞いてくれるようになったのは内緒。