企業、個人などビジネスの規模問わず、どのジャンルでも数多くの競合が溢れている状況において、いかに、自社の商品やサービスをより多く売っていくかが課題です。
数あるマーケティングを学んでいくうえで、必ずといってよいほど耳にする「ブランディング」。
今回はブランディングとは何か、どういった意味を持ち、行うことでどんな効果があるのかを理解したうえで、手順に沿ってブランディングを行う方法を解説していきます。
近年では、企業のみならず、個人でのブランディングの必要性も高まっています。
InstagramやTik TokなどのSNS上でも重要となりますので、ぜひこれを機に学んで、取り入れることをお勧めします。
ブランドの意味と定義
では「ブランド」とは何なのでしょうか。まずはここから理解していきましょう。
ブランドの語源
そもそもブランド(brand)は古ノルド語(8世紀~14世紀頃にスカンジナビア人によって使われていた古い北欧の言語)で「焼き印を付ける」という意味を持つブランドル(brandr)が語源となっています。
昔、放牧している牛などの家畜がどれが自分のもので、どれが他人のものなのかを把握できるように、家畜に焼き印を付けていたことがブランドの始まりと言われています。(牛が最初という説あり)
その後時代は変わり、中世ヨーロッパで組織された商工業者の組合(ギルド)では、商品の品質を保証して、消費者の信用を得るための出所表示として「商標」の添付を義務付けていました。
ブランドとは
ブランドとは、アメリカの経営学者であるフィリップ・コトラーは以下と定義しています。
個別の売り手もしくは売り手集団の商品やサービスを識別させ、競合他社の商品やサービスから差別化するための名称、言葉、記号、シンボル、デザイン、あるいはそれらを組み合わせたもの。
また、フィリップ・コトラーは現代におけるブランド戦略の1つとして「4つのブランド戦略」を提唱しています。
- ライン拡張(すでに認知されているブランドを活用しつつ製品の種類を増やす)
- ブランド拡張(すでに認知されているブランドを活用しつつブランドイメージを更に広げるための新商品、改良商品を売り出す)
- マルチブランド(同一分野、カテゴリー内で別の新たなブランドを展開する)
- 新ブランド(新しい分野、カテゴリーに新たなブランドを展開する)
ブランドの要素
ブランドにはいくつかの要素があります。代表的なものを紹介しましょう。
- ブランド名
- ロゴ
- カラー
- キャラクター
- パッケージやデザイン
- 音(ジングル)
- 匂い など
あなたが好きなブランドも上記のような要素をいくつか持っているはずです。
ブランディングとは
マーケティング初心者のためにブランディングとは一体どういうものを指すか簡単に説明もしておきましょう。
ブランディングとは、 ブランドに対する信頼性や共感を通じて自社や自社が取り扱う商品、サービスの価値の向上、他社との差別化を目指すためのマーケティング戦略の1つです。
- 「〇〇といえばあなたの店やブランド」
- 「あなたの店やブランド=〇〇」
などイメージやキーワードからあなたの会社や店、商品、サービスを連想するようなイメージ戦略もブランディングの1つです。
ブランディングをもっとわかりやすく説明するならば、ターゲットに対してあなたのブランドを認知させ、信頼や安心、共感を得て「選ばれる理由を増やす」ために行う戦略(行動)とも言えます。
ブランディングを行うことであなた自身やそれを取り扱う商品、サービスの価値が上がるだけでなく、信頼されるきっかけともなり、今後行うすべてのマーケティング活動において非常に有利なポジションを取ることが可能です。
Marketing Gymのブランディングの定義
私たちMarketing Gymのブランディングは以下と定義しています。
- 顧客が製品やサービス(プロダクト)に価値を見出した「便宜と独自性」をブランド要素(先述したネームやロゴ、色、形など)を通じて記憶すること。
- ブランドを忘れることを防ぐと共に、ブランド要素で思い出すことを容易にして購入をきっかけとすること。
- 機能的だけでなく、感情・情緒的な便宜、独自性を感じてもらうこと。
ブランディングの重要性
一見、ブランディングは大きな企業が行う戦略と考える方も少なくはないですが、なぜ企業規模、組織、個人問わずブランディングを行うわなければいならないのでしょうか。
現代では、同じようなサービス、商品が溢れている状態です。
周りに数多く存在する競合他社の中から、ターゲットにあなたやその商品、サービスを選んでもらわなければいけません。
ターゲットがあなたやその商品、サービスを全く知らない状態よりも、ブランディングを通じて知っている方が、選びやすい、買いやすいのではないでしょうか。
アパレルなどファッション要素の強いジャンルに限らず、美容院、マッサージサロン、ネイルサロン、コーチやコンサルタントなどあなたのビジネスのジャンルが何であれ、ブランディングは非常に大切なことです。
ブランディングを行うべき3つの目的
私たちMarketing Gymでは、ブランディングには大きく3つの目的があり、それらを正しく理解したうえでブランディングを行い、大きな効果をもたらすと考えています。
- あなたのプロダクト(製品やサービス)を顧客に記憶してもらい、必要な時に思い出してもらう
- プロダクトに加えて付加価値の創出
- プロダクト以外の企業ブランディングや従業員、株主や投資家へのブランディング
①プロダクトを顧客や潜在顧客に記憶してもらって必要な時に思い出してもらう
例えば、あなたのプロダクト(製品やサービス)を顧客が1度購入してくれたとします。または、何かのきっかけであなたのブランドのロゴを認知した新規客となる潜在的な顧客としても良いでしょう。
その後あなたが、コンテンツを通じて何も接触しなければ、1度購入した顧客は購入した場所やブランドなどいとも簡単に忘れてしまいますし、何らかのきっかけでプロダクトやブランドを認知した潜在顧客もそうです。
しかし、ブランディングがうまく機能すれば、プロダクトやブランドを思い出すきっかけとなり、再び購入してくれる可能性も上がります。
つまりブランディングによって忘れにくくして購入の可能性を高める目的です。そうすることで継続的な購入を促す手段が1つ増え、収益の安定化にも繋がります。
ただし、これには選ばれる理由(便宜)と他を選ばない理由(独自性)をうまく提案できていることが前提です。
②あなたのプロダクトに更に付加価値を創出する
ブランディングの2つめの目的は付加価値の創出です。
あくまでも先述した機能的便宜や独自性を与えて顧客や潜在顧客の記憶に残すことを前提として、更に感情的、情緒的な便宜と独自性を加えることを指します。
感情的、情緒的というと何だか抽象的にも聞こえますが、要は「何となくこっちの方がいいかも」と思ってもらえるようなことです。
ユニクロのブランディング事例
例えば、大企業であればユニクロがわかりやすいですね。
ユニクロは以前(2000年より前)、チェーン戦略を取っていました。当時は主力商品であるフリースが爆発的に売れていましたが2000年代初めの頃にはそれが鈍化したことで、これまでのチェーン戦略からブランド戦略へ方向転換を行っています。
ブランド戦略を展開した当時、日本国内だけでなく海外でも勝てるブランドとなるため、訴求ポイントを「日本の良さ」とし、品質やこだわりなどの強みを強く打ち出すこ都としています。
また、そのころ「ユニクロ」のロゴも一新。赤背景に白文字で「ユニクロ」「UNIQLO」のロゴもすっかり有名になりましたね。
その他、公式フォントも作成し、クリエイターに配布することでユニクロの情報発信ツールとして活用されています。
ユニクロは、近年テレビCMに「綾瀬はるか」さんを起用しています。これが感情、情緒的な価値にあたります。
綾瀬はるかさんをCMに起用したからといって、商品の機能的な便宜や独自性は何も変わりませんが、起用することで「あんな風になりたい、着こなしたい」「ユニクロでもおしゃれ、素敵」「何となくいい」といった感情や情緒が生まれるわけです。
③企業ブランディングや従業員、株主や投資家へのブランディング
3つめは、つまりインナーブランディングにあたります。
顧客や潜在顧客へ向けたブランディング効果ではなく、従業員や株主、投資家といった内側に向けたブランディングを指します。
また、リクルーティング(採用)にも効果を発揮します。
ブランディングの効果
ブランディングはあなたが思っている以上に様々な場面で効果を発揮します。
- 他社との差別化(知らないよりも知っているこのブランドの方がいい)
- 価格競争からの離脱(このブランドだから多少他より高くても買う)
- 知名度が高いことでの広告コストや求人コストの削減(このブランドだから買う、働きたい)
- 見込み客獲得のハードルが下がる(このブランド見たことある、聞いたことあるからここにしよう)
- 顧客からの信頼性である「ロイヤリティ」を得ることができる(ブランドへの愛着や信頼、忠誠) など
ブランディングを行うことで、あなたは様々なメリットを得ることができます。
どうやる?ブランディングを行う手順(流れ)
ブランディングが大体どういうものかと理解できたら今度は具体的にブランディングを行うための手順を理解しておきましょう。
- ターゲットの設定
- ブランドアイデンティティの設定
- ブランディングコードとスタイルの設定
- クリエイティブの作成とメディアの設定
以上の4つがブランディングの手順です。
先述したようにブランディングが整っていない状態でのマーケティングはあなたが思っている以上に良い結果は生まれません。
言い換えるとあなたが今以上にもっとブランドを強化すれば、様々なマーケティングにおいてこれまで以上に良い結果をもたらす可能性を十分秘めているということです。
①ターゲットの設定
ブランディングだけにとどまらず、ターゲットの設定はマーケティングの全てにおいての重要事項です。
広すぎるターゲット、曖昧なターゲットは結果的に誰にも響かず、届くことなくあなたが行うマーケティングからセールスすべてに悪影響を及ぼしてしまいます。
3C分析、PEST分析、SWOT分析などフレームワークをうまく利用して、自社や競合の強みや弱み、環境、競合との違い、顧客のニーズを明確にして参入する市場や製品カテゴリ、ターゲットユーザーを決めていきます。
この際、3C分析の後にPEST分析、、、、というような順を追って分析するというよりは3C分析を行いながら他の分析を行うといった何度も往復するようなイメージです。
②ブランドアイデンティティの設定
ブランドアイデンティティとは顧客にどうイメージして欲しいかを明確にして、そのイメージを言葉にして顧客に働きかけることを指します。
また、ブランドアイデンティティとは以下の3つの価値を示します。
- 性能や品質といった実利価値
- デザインやロイヤリティ(愛着や忠誠)などの感性価値
- 企業コンセプトやストーリーなどの共感価値
「○○=あなたのブランド(企業自体やサービス)」といった特定のイメージを持ってもらうためにサービスや経営方針、プロモーション、マーケティングなどを行います。
ブランドアイデンティティの実行により、他社との差別化やターゲットの明確化にも繋がり、ブランド戦略を構築する際に非常に役立ちます。
また、商品の価値やブランドが抱くビジョンをブランドアイデンティティーとして発信することで、企業イメージやサービスイメージの向上のほか、ユーザーの購買意欲の向上にも繋がります。
みなさんが思い描いている、ブランディングがこれにあたると思います。
③抽象的なブランドメディア「コード」「スタイル」の設定
続いて抽象的なブランドメディアの設定を行います。ブランドアイデンティティーを掘り下げ、具体的に表現していく作業で、「コード」「スタイル」の設定とも呼ばれます。
ブランドアイデンティティーにおけるコードとは抽象的なブランドメディアであるキャッチコピーやスローガンなどを、言葉の通り抽象的にブランディングを反映するクリエイティブを指しています。
抽象的なブランドメディアであるコード設定を行った後、定めたブランドアイデンティティーを元にスタイル設定を行っていきます。
ここでのスタイル設定とはコンセプトや製品のデザインなど、実際に目に見える形で表現するクリエイティブ指しています。
④可視的なブランドメディアのクリエイティブの作成とメディアの設定
ブランドアイデンティティーを抽象的に表したコード、スタイルの設定を行った後、今度は目に見える形で表現するもの(ホームページやメディア、広告、動画など)のクリエイティブの作成を行います。
また、メディアの設定は企業規模や経営者の方針や予算、狙うターゲットによってそれぞれ異なると思いますが、ブランドアイデンティティを抽象的に落とし込み、更に可視的に落とし込むというように徐々に形にしていく作業です。
ブランディングつまり、これまでに挙げた段階を経て、初めてメディアの設定段階に移ります。
クリエイティブに関しては、デザイン会社等に外注する場合も多いと思いますので、必ずブランディングを明確にした後、デザイナーとのすり合わせを行いましょう。
そうすることで、あなたが定めたブランドアイデンティティと実際に目に見える形で表現するクリエイティブとの差が縮まり、デザイナー自体も制作しやすくなります。
集客方法を調べる前にまずはブランディング
いきなり集客方法やマーケティングを実行してもなかなか思うようにいかない原因は、このブランディングの有無も影響しているでしょう。
「集客方法」を検索し、結果に並んでいる、複数の記事を見て集客方法は既に理解できたと思いますので、これを機にまだブランディングの再設定を行ってみてください。
また、ブランディングは途中で方向転換しても構いませんが、短期間の間にリブランディングを繰り返すとユーザーが困惑したり、イメージが定まらないため、最初にしっかりと設定した後は一定期間様子をみることをおすすめします。