毎シーズン、夏のセール前と冬のセール前にアクセスが急増するこの記事。厳しいと言われ続けるアパレル業界において、年々早くなるセールの開催時期。
セールの「目的」と「施策」を明確にし、売上とセール後に良い影響を与える為にしっかりと理解しておきましょう。
SALE/セール本来の目的は何なのか?(マインドセット)
そもそも何の為にセールを行っているのでしょうか。本来であればプロパー(定価)で売る予定だったがうまくいかず、在庫を翌シーズンまで抱えたくない為に行うセール のいわゆる「消化」 目的。
セールを行う店の大半がこの目的だと思いますが、ただ安いだけでは売れなくなってしまったこの御時世。世の中にはたくさんのアパレルショップが溢れかえり、例え大手であっても閉店するケースも少なくはありません。
更に拍車がかかり、これから先10年と言わず、5年でも生き残る店はかなり減ると言われています。
ただ消化目的でダラダラとセールを行うのでは、到底勝ち残っていく店とならないのは充分承知のはずです。「消化」と同時に「施策」を加え、効率的かつ有効的にセールを行うのが重要です。
値下げしたのになぜたいして売れないのか?
開催時期はだいたいどこも同じ。普段マークダウン(値下げ)を行わない会社であれば多少のマークダウンでもちょっとしたオファー(特典)の強みにはなるでしょうが(ちょっとしたね)、毎回毎回同じような時期に同じような値下げ率で同じような展開で開催するベタなイベントでは、もちろん顧客、新規客共に慢性化し、飛びつくような勢いのある動きはしてもらえないでしょう。
いま一度客観視してください。例えば物は何でも構いませんがどこか行きつけの小売店があり、上記の様なイベントの仕方で数年開催されたとします。勢いは落ちないでしょうか?慢性化しないでしょうか?
また、ある商品を狙って入った新規客としましょう。
セール時期に知ったあなたは次にその店に訪れるのはいつでしょうか?そしてまた行きたいと思うのはどのような時でしょうか?
今度はあなたに主観に戻って頂きたい。
常連だろうか、新規客だろうがそのお客様にあたなはどのようなアプローチやケアをしてますか?
ただこの時期までに売れなかった商品を安くしてでも「消化」しているだけの単なる安さでの押し売りになっていないでしょうか。
では逆に双方にとってWIN,WINになるにはどうしたら良いのでしょう。そこまであなたは知恵を絞り、そのSALEを考えているのでしょうか?
そうしないからこそ、それなりに売れ、意外と残りあなたが思い描いた消化率にも届かず、途中で更にマークダウンし、だらだらとモアセールやクリアランスセールといったような形で無理やり消化しようとしていないでしょうか?
ターゲットである消費者の行動心理を理解しようとしているでしょうか?
だいたいこの時期からどこもセールをするのはわかっているからこそ尚更です。
セール時期に買おうと、少し前から目星をつけ、セール時期に購買欲がピークをむかえるお客様に対してお客様に何かしてやれることはないでしょうか?
いわゆるセール客が「定価よりも安く手に入れる」という欲求、そしてあなたの「消化する」欲求。
双方にとって良いタイミングをあなたの勝手な都合や面倒臭さで逃しているのを今一度考え見直して頂きたい。
考えるのはあなただけの都合でなく、双方にとって良い都合であり、セールをうまく使えば武器になり、下手に使えばあなただけでなくお客様にもデメリットしか与えないかもしれない。
散々言いましたがセールを戦略に選んだ以上、後は売るしかありません。ではセールを成功させる為にはどのような事をしなければいけないのでしょうか。
アパレルのSALE戦略を成功する為に行う事(セールス)
さて、これまでのマインドセット(心構え)が整ったらいよいよ実践といきましょう。もちろんこれを読んでいる時期が、夏だろうが冬だろうがどちらでも構いません。
縦に売るアイテムカテゴリーを選定する
まずは、セール時期に縦に売るアイテムカテゴリーをどれにするか選定しておきます。SALE=安いというのは仕方ありません、、、そもそもあなたから仕掛けた戦略ですから。
このセール時期により売上を上げるには言うまでもなく客単価。ただでさえプロパー時期と比べて落ちる客単価と粗利。自社ブランドを持っているのであれば少しはマシだが他者からの仕入れをメインとするセレクトショップでは尚更痛いことでしょう。
そこで少しでも客単価をより簡単に確保する為に選定する「縦に売るアイテム」として、マークダウンしても一点単価の取れるものを用意しましょう。冬であれば迷う事なくアウターを、夏であればボトムス、シューズを。決してゴミのように安いカットソーをひたすら縦に売ろうなんて考えてはいけません。
ただでさえ安さに寄ってくる彼らに真っ向から挑んでは勝ち目はないし、彼らには店頭の平台と店内の徘徊で「人気のある店」という演出を手伝ってもらいます。
もし今回のSALEが冬だとしたら、まずは単価の取れる縦に売るアイテムカテゴリー「アウター」を軸に、売り場、ボディ共に「アウター」を売る仕様にディスプレイを変更し、それをベースに今度は「ボトムス」と「ニット」、「ブーツ」にも反映。
更にプラス一点の低単価のアイテムを自動で売れるディスプレイ且つ、販売員がプラス一点として提案しやすい位置へ配置。
もちろん、販売員にはどんな商品でも接客に入ったら「アウター」から「ブーツ」までを絡めるセールスを徹底させる。徹底です!
必ずしも全部売れないのはわかっていますが、それでも徹底させる。通常時より接客回数が多い為、この徹底の繰り返しをSALE期間やり続ける事で、SALE後半時には客単価に大きく差が出ます。
SALE弾のスライド
最初に選定したアウターが弾切れもしくは色欠け、サイズ欠けにより勢いが弱まりかけたら次に単価の取れるアウターへスライドします。その判断はモノ、客の動きを把握しているはずの売り場にいる店長に一任します。
この捉え方はアウターからブーツに至るまで同じく行う事です。
SALE弾の仕入れ
あなたの店が小規模且つセレクトショップであればわざわざSALE弾を新たに仕入れる事はオススメしません。
言うまでもなく、ただでさえプロパーで売り切れなかった且つマークダウンにより粗利が落ちているにも関わらず、新たに仕入れを起こすなんて何の為に売っているのかわからなくなります。あくまでもあるもので出来る限り勝負して頂きたいものです。
セールスについてはキリがないのでこの辺りで一旦終わりとします。「縦売り」に関しては別記事でも書いていますので、そちらを合わせて読んで実行させることをおススメします。
SALE時の2つ目の目的を遂行する
1つ目の目的はプロパーで消化できなかったアイテムを出来る限り消化して現金化する事。そして、肝心なのは2つ目。
SALE客のリストを回収する
SALE戦略の2つ目の目的を同時に遂行していきます。すでにあなたも実感しているように、SALE時の客の大半は通常時と比べリピートしにくい。ですが、この時期は通常よりも多くの客数が見込める為、その中の1割でもリピートして貰えれば良いと捉えましょう。
何もせずただ粗利を落とし、更にSALE弾を新たに仕入れて自ら今期の利益を減らしても平気な顔をしているお隣さんの店と同じであってはならない。決して。
SALE時のリスト回収にはデメリットがある。それは小規模であっても単価の高くない店では接客をこなすだけで精一杯、レジにてリストを回収するにも混雑する事が多々あります。
それでも来シーズンに少しでも売上を伸ばそうと思うあなたであれば工夫して取ってくれると信じたいものです。例え通常時のリストが用紙であっても、混雑時はLINE公式アカウントに変更するなど機転が利いたあなたであってほしい。
リストが取れた後は通常時と同じく新規客から定着客までの、マーケティングの仕組みに乗せましょう。例えば通常時よりリピート率が低いとしても。。。
やっぱりリピートしなかったと思っても諦めてはならず、リピートしてくれない彼らの一部には「安いのが好き」な子もいるはずです。ビジネスに貪欲なあなたはそんな子も見捨ててはいけない。
SALE時に取ったリストのうちリピートしなかったリストは「離脱候補リスト且つSALE客」のリストにセグメントしよう。
そして大きな割引きキャンペーンや次回リストには、必ずご招待しましょう。ざっと述べたがここまでしてやっとまともな、最低限のSALE戦略とします。
ただ何も考えず売るだけならいつかはSALEを迎えられなくなる時期が来てもおかしくはありません・・・